ushi_ha_ukeの日記

ハンバーグくんの日記です

2000文字の菊大

胸の奥がきゅっと熱くなって、いつもの帰り道なのに大石の事ぼんやり考えただけでなんだか泣きそうになったり、でもそういう事は絶対大石に話すつもりも見せるつもりもなかった。大石といる時は本当に楽しいから。多分俺の、大きすぎる大石への難しい想いも、友達って名前を付ければ、悲しいことなんて全然ない。心の底から楽しいと思えるから。ずっと大石と遊べたらいいな。大石は俺の話に笑う。きっと大石の友達の中で俺の話が一番おもしろい。だって大石のツボとか、大石が嫌だと思うこととか、全部知ってるから。だけどいつか、俺より大石を知らない奴が、大石の心を釘付けにしたりして、そしてそれは心配しすぎとかじゃなくて、明日起こるかもしれなくて、姉ちゃんがリビングで話してた、ヒロインにとって幼馴染の男の子はすでに家族みたいだから、恋愛対象にはならないって漫画の内容を思い出す。大石の事なんでも分かるからこそ、大石が俺の気持ちを知った時に、きっと答えが出せなくて、それでも誠実に対応しようとしてくれて、でも、小説の中の整合性のある恋愛しか知らない、恋愛と友情がはっきりと心の中で区分された人しか知らない大石はきっと、すごく苦しんで、高熱が出たみたいに苦しんで、それで、もう終わり。俺が全部忘れてって願っても、大石は俺のバカな失言を忘れてくれる事はなくて、それは大石が結婚式をあげる世界で一番めでたい日に一番痛む傷になる。俺の友人代表スピーチだって大石の傷に塩を塗り込む言葉にしか聞こえないだろうし、そのうち俺のことを思い出すだけで、大石は悲しい苦しい気持ちになる。そんなのは嫌だ。大石にとって、俺はずっと一緒にいると楽しくて、力がもらえるみたいな存在でありたい。それは、間違いなく俺の個人的な恋愛より大切な事で、でも、こんな事をわざわざ毎日自分に言い聞かせなきゃいけないくらい、本当は、もし大石に気持ちを伝えたら、或いは、なんて、バカな希望が胸に燻っているから。

それで結局、俺は大石に想いを伝えてしまった。色々伝えることのメリットとか圧倒的なデメリットとか言い聞かせてたくせに、カッとなって、告白しちゃった。そして告白した時の俺の心は、期待一色。あんなにネガティブな事を想像しておいて、一線を超えてしまえば実際は大石が頷いてくれるのをめちゃくちゃ期待してた。そしてやっぱり、大石は青ざめるでも、言葉に詰まるでも、暫く考えさせてくれでもなくて、なんと頬を赤く染めて、俺も好きだ。なんて返してきたんだ。あり得ない、そんな都合のいいことがあるものか。俺は大石の事をずっと見ていたけど、俺のことを恋愛的な意味で好きな素ぶりなんて一切見せてこなかったじゃん。俺に合わせてくれているんだ。俺が傷つかないように…なんて後ろ向きな考えは一切無くて、接戦の試合に連携プレーが光って辛くも勝利した時みたいな、大はしゃぎ。そりゃそうだよ!だって大石俺のこと大好きだもん!やったー!大石大好き!身体中で大石に抱きついて、感じる大石の温もり。俺もだよ。ありがとう、英二。いつも通り落ち着いていて、優しくて、でもただ合わせてくれているんじゃない。大石の胸の中の熱がこもってる声で、そう返された時、ボロボロ熱い涙が溢れた。信頼していなかったのは俺の方だ。大石が俺を悲しくさせたことなんて、そりゃ、あるけど、でも結果的には一回も無い。大石は俺の楽しいって気持ちそのもので、もう…結局言葉じゃ表せないけど、温もりだけで愛しさが爆発して、涙が出ちゃうほど胸が熱くなるのは、きっと俺にとって生涯大石だけだ。告白したらきっと下り坂。そう思っていたけれど、高みしか見えない。目指せない。なんだか無性に走りたくなって、大石の手を掴んで帰り道を走る。この道を走ってもゴール地点は大石の家だけど、空まで駆けていってる気がした。体が軽い。楽しい。大好き。大石も手のひらを握り返してくれて、顔は俺を見てくれてるけど、大石も空を目指してた。きっととか、多分じゃなくて、分かった。黄金ペアのゴールは全国ナンバーワンダブルスだった。でも、ゴールしたら、これからもずっと永遠のパートナーだけど、でも終わりだと思ってた。でも、道標は自分たちで決めるんだ。楽しい!こんなに楽しくて良いのかな。楽しい、好き、天衣無縫の極みみたい。慣れ親しんだ大石の家の前につく。キスもしないけど、ハグはもう一回する。大石と俺の体温が混ざって、汗が滲むくらいあつくなる。この感覚がめちゃめちゃ好き。優しくて、でも熱い目をした大石が、大石が動くと聞こえる制服が擦れる音が、ドキドキと心臓の音を大きくする。夕飯を食べた後に、ストリートテニス場に行かないか?って言われた。真面目な大石がそんな事を提案するのってすごく珍しい。今日はチョコレーツが出る歌番組があって、今日だけは絶対チャンネル戦争に打ち勝って見るって張り切っていたけど、そして大石は楽しみにしてた恋愛ドラマがあるはずだけど、俺は少しの後ろ髪も惹かれる事なく、うん!と大きく頷いた。今なら本当に、飛べる気がする!